東洋医学では、冬は「腎」をいたわる季節
東洋医学には、自然界の変化と身体の働きを結びつけて考える「五行」という考え方があります。
その中で、冬は「水」に属し、「腎」と深い関わりがあるとされています。
ここでいう「腎」は、現代医学でいう腎臓だけを指すものではありません。
東洋医学では、生命活動の土台となるエネルギーを蓄え、成長・発育・生殖・老化などに関わる大切な働きと考えられています。
腎に蓄えられる生命エネルギーは「腎精」と呼ばれます。
腎精は、身体の成長や成熟、年齢を重ねていく過程を支えるものとされ、骨や髪、歯などとも関係づけられています。
例えば、東洋医学では次のような変化を腎の働きと関連づけて考えます。
- 年齢とともに疲れやすくなる
- 腰や膝に力が入りにくい
- 髪のハリやツヤが気になる
- 足腰が冷えやすい
- トイレが近くなる
もちろん、これらの症状にはさまざまな原因があります。すべてを腎の弱りだけで説明できるわけではありません。
大切なのは、冬は身体のエネルギーを消耗しすぎず、休息を取りながら過ごすという東洋医学の知恵です。
寒くなると、なぜ疲れやすくなるの?
寒さが厳しくなると、私たちの身体にはさまざまな変化が起こります。
例えば、寒い場所にいると、無意識に肩をすくめたり、身体に力が入ったりしませんか?
寒さによって筋肉が緊張しやすくなり、肩こりや首のこわばりを感じることがあります。
また、気温が下がると血管が収縮しやすくなり、手足の冷えが気になることもあります。
さらに、冬は日照時間が短くなります。
朝になっても外が暗かったり、夕方早く暗くなったりすることで、生活リズムや気分に変化を感じる方もいるでしょう。
寒さで外出する機会が減り、身体を動かす時間が少なくなることもあります。
こうした変化が重なることで、疲れやだるさを感じやすくなる場合があります。
特に更年期世代の女性は、年齢に伴う身体の変化も重なり、以前とは違う疲れ方を感じることもあります。
「年齢のせいだから仕方ない」と我慢せず、今の身体の状態に合わせて生活を見直してみましょう。
冬の養生は「温める・休む・蓄える」
冬の養生で大切にしたいのは、身体を冷やさず、しっかり休み、エネルギーを消耗しすぎないことです。
毎日の生活で意識したい3つのポイントをご紹介します。
① 身体を冷やさない
冬は、首・手首・足首を冷やさないようにしましょう。
特に足元は冷えを感じやすい場所です。
靴下やレッグウォーマーを活用したり、足湯で足先を温めたりするのもおすすめです。
ただし、厚着をしすぎて汗をかくと、汗が冷えてかえって身体を冷やすことがあります。
温度調節しやすい服装を心がけましょう。
② 睡眠を大切にする
東洋医学では、冬は活動を少し控え、エネルギーを蓄える季節と考えます。
夜遅くまで活動するよりも、できるだけ早めに休み、身体を回復させる時間をつくりましょう。
寝る直前までスマートフォンを見る習慣がある方は、少し早めに画面から離れてみるのもよいですね。
毎日同じ時間に起きることも、生活リズムを整える助けになります。
③ 身体を温める食事をとる
冬は、温かい汁物や煮込み料理を食卓に取り入れてみましょう。
東洋医学では、黒豆や黒ごま、山芋などは冬の腎をいたわる食材として親しまれています。
また、大根、にんじん、れんこん、ごぼうなどの根菜類や、きのこ類もおすすめです。
冷たいものばかりで済ませず、温かい料理をゆっくり味わうことも冬の養生のひとつです。
特別な食材を用意する必要はありません。いつもの食事に、温かい汁物を一品加えるところから始めてみましょう。
冬の冷えや疲れにおすすめのお灸
冬のセルフケアとして取り入れたいのが、お灸です。
お灸は、もぐさを使ってツボの周辺を温める伝統的なケア方法です。
身体をじんわり温めながら、ほっとひと息つく時間をつくることにもつながります。
この季節におすすめしたいツボを3つご紹介します。
三陰交(さんいんこう)
内くるぶしの一番高いところから、指幅4本分ほど上にある、すねの骨の内側の際に位置するツボです。
東洋医学では、肝・脾・腎の3つの経絡が交わる場所とされています。
冷えが気になる方や、女性の身体の養生でよく用いられるツボです。
関元(かんげん)
おへそから指幅4本分ほど下にあるツボです。
東洋医学では、元気の源と関係する場所とされ、お腹を温める養生によく用いられます。
湧泉(ゆうせん)
足の裏にあるツボです。
足の指を曲げたとき、足裏の前方にできるくぼみのあたりに位置します。
東洋医学では、腎の経絡の始まりにあたるツボとして知られています。
お灸をする際は、熱さを我慢せず、心地よい温かさを目安にしてください。
自宅で行う場合は、使用するお灸の説明書に従い、必ず火傷や火災に注意しましょう。皮膚の感覚が鈍い方、皮膚に傷や炎症がある方、妊娠中の方などは、自己判断で行わず専門家に相談してください。
冬は頑張るよりも、身体をいたわる季節
忙しい毎日の中では、つい自分のことを後回しにしてしまいがちです。
仕事や家事、家族のこと。
やらなければいけないことがたくさんあると、疲れていても無理をして動いてしまうことがあります。
でも、冬は少し立ち止まって、自分の身体をいたわる時間をつくってみませんか?
温かいものを食べる。
いつもより少し早く眠る。
足元を温める。
お灸で身体をじんわり温める。
そんな小さな積み重ねが、冬を心地よく過ごすための養生になります。
東洋医学では、冬はエネルギーを蓄える季節。
頑張ることだけでなく、休むことも大切にしていきましょう。
まとめ|立冬から、自分の身体をいたわる習慣を
立冬を迎え、これから本格的な冬へと向かいます。
寒さによる冷えや疲れを感じたら、まずは日々の生活を振り返ってみてください。
身体を温めること。
しっかり眠ること。
温かい食事をとること。
そして、自分の身体の声に耳を傾けること。
冬の養生は、特別なことを頑張る必要はありません。
今の自分にできる小さなことから、ひとつずつ始めてみましょう。
